EURO2008〜ベルギー編〜

4:アントワープ(Antwerp/Anvers/Antwerpen)

ベルギーに到着して2日目。
ブリュッセルに次いで有名な都市、アントワープに行ってきました。
アントワープはブリュッセルよりも北部にあり、電車で1時間くらい。
SNCB(ベルギーの国鉄)に乗って行きます。
この「B」マークがついているのが、ベルギー国鉄の車両。
ヨーロッパは鉄道があちこちに伸びているので、
電車に乗ってゆったりとした時間を楽しむことができます。

 

では、ベルギーでの電車の乗り方。
出かける前に、駅で電車の時刻表を調べましょう。出来れば前日に。
日本のような、持ち運びのできる小さな時刻表などはありません。
駅のホームに大きいのがあるので、それを見ます。
メトロと違って改札がないので、自由に入れます。

 

こちらの時刻表は日本のとはかなり違う。
大きな目的地表示の下に、小さく停車する駅が羅列されています。
ここから自分の目的地を探すのです。
急行などもあるので、発車時刻と到着時刻をよく見ましょう。
行き先が異なると、まったく違う場所に行きついてしまうので注意。
またこちらの電車というのは、「メッヘレン行きは毎時25分」のように、
ある程度の規則性を持っていることが多いので覚えやすいです。
日曜や祝祭日などは、別の時刻表がありますので、曜日の確認も忘れずに。

 

切符の買い方ですが、駅の窓口で買います。
カードを利用した自動販売機もありますが、これは遠距離専用。
近距離の切符は窓口で行き先を告げて買います。日本と逆ですね。
かなり大袈裟な切符が近距離でも渡されます。
改札がなくても、車内で検札があるので、大事に持って乗って下さい。
窓口で「return」と言えば、往復切符が買えます。

 

それからもう一つ注意。
駅にこのような掲示板があります。
左のは、このホームにどの電車が来るのかを示すもの。
右のは、どの電車が何番線ホームに来るのかを提示します。
ここで問題なのは、目当ての電車が入線してくるホームが変更となっても、
放送があっても聞きとるのが難しいということです。
だからこの掲示板を、ちょくちょく見ておきましょう。
また電車が発車する際もドアが閉まる際も、放送などは全くありません。

 

さて車内の様子です。日本とはずいぶん違いますね。
これは普通の電車で、通勤にも使われているものです。
混雑も日本ほどではなく、これだったら通勤は少しは楽だなあ。
通勤ラッシュを避けるために、定時よりも2時間近く早く出勤している私には
とてもうらやましい限りです。

 

途中にはのどかな田園風景が続きます。
畑もあるし牧場もある。
住宅街もありますが、ベルギーの家はレンガ造りが多い。
「ベルギー人はレンガを持って生まれてくる」と言われるように、
この国ではレンガで家を建てるのは、ごく普通のことのようです。
とてもかわいらしい、メルヘンチックな家が並んでいたりします。

 

アントワープに来るのは8年ぶりくらいになります。
以前2回ほど来たことがあったのですが、
時間をおいて訪れたにもかかわらず、駅はいつも工事中でした。

そして今回…うおー、なんだこれは!すごいきれいになってる!
工事はさすがにすっかり終了していて、かなり近代的な駅に
生まれ変わっておりました。

 

でもなおしたのはホームやコンコースの部分だけ。
メインの駅舎は、昔のままでした。
以前もこのように屋根に骨組みが見えて、
この筒のようになっているその向こうに、
あの素敵な駅舎が見えていたのです。
中央の時計も以前のままです。
こういう素敵な建築物は、やはり残してほしいですね。
よかった。

 

しかし残念なことが一つ。
この駅舎の中に以前あった「Wagon Ritz」というカフェがなくなっており、
代わりにもっとおしゃれなカフェに変わっていた…。
ここに来る目的の一つに、ワゴン・リッツがあったので至極残念。
以前のカフェは、はっきり言って古めだったけれど、
それがとてもいい味を醸し出していたのです。
窓になぜか銃弾の痕があったりしてね。
ペンギンみたいな歩き方の、なんとも味のある髭の親父さんが
ぺたぺた歩きながら注文をとりにきてくれていたワゴン・リッツ。
あの親父さん、今はどうしているのかなあ。また会いたかったなあ。

 

駅舎の外に出てみましょう。
アントワープは、ダイヤモンドの街です。
駅前は勿論、駅のコンコースにもダイヤモンドが煌きます。
宝石好きな女性は狂喜乱舞かも。
品物はピンからキリまで、様々なものが並びます。
宝石店というのではなくて、あくまでもダイヤモンドがメインのお店。
私は宝石に関しては全く知識がありませんが、
見る目のある人が見たら、掘り出し物があるのかも。

 

有名なアントワープの大聖堂は、街の中心のマルクト広場にあります。
遠くからでも見える塔は、ベルギーで一番高い。
アントワープの駅からは徒歩30分くらいですが、トラムでも行けます。
今回トラムに乗って行ってみましたが、乗る系列を間違えたらしく、
いつまで行っても行きつけない!
結局地図を頼りに、てくてくと歩いて行きました。
地図は駅の観光案内所で1ユーロで売っています。

 

そしてようやくたどり着いた、アントワープの大聖堂。
周囲にはお土産店やらレストランがひしめき、
すっかり観光地の様相を呈していますが、
やはり信仰の象徴でもあるので、とても威厳があります。
観光客もたくさん来ており、いつも賑わっています。

 

中に入るには、入場料が必要。4ユーロだったかな。
入口入ってすぐにこの受付があって、
ここで料金を払います。

 

ここは日本人には特に有名な教会なのです。
あのカルピス名作劇場の、今でも人気が衰えない
「フランダースの犬」の舞台の教会なのですね。
住むところもなくなったネロとパトラッシュがここにやってきて、
最後に一緒に天に召されるシーンは、
多くの日本人の涙を誘いました。
今でも日本人観光客の姿は多く、ここで涙ぐむ人もいるそうです。

 

ネロが見たいと切望したのはルーベンスの絵ですが、
壁に数多く見られるステンドグラスも素晴らしいものです。
太陽の自然光を受けてきらきらと光輝くさまは、
本当に息をのむほど美しい。
このガラスを作ったのはルーベンスほどの有名人ではなく、
数多くのガラス職人でありましょう。
しかしこれは本当に素晴らしい芸術です。
一つ一つの絵にはちゃんとストーリーがあるのでしょうが、
そういう基礎知識がなくても、美しさを堪能するだけで十分ともいえます。

 

彫刻なども、また見事なものです。
祭壇の両側の、偉い人(?)が座る椅子や、
高い場所にしつらえた説教壇などにも、
本当に緻密な彫刻が施されています。
長年の間に色が変わって、それがまたいい感じに。
とにかくどこを見ても手が込んでおり、
日本の詫び寂びとは全く違った、西洋装飾。
一見の価値ありです。

 

そしてこれがルーベンスの「キリスト昇架」「キリスト降架」です。
ネロが見たいと願っていた絵ですね。
バロック絵画の特徴の一つである、動きを感じさせる影を多用した絵。
ほぼ実物大で描いていたのではないかと思えるほど、大きな絵です。
この2作の他、目立たない場所に「キリスト復活」があり、
これらをまとめて三連祭壇画で、この他に「聖母昇天」があります。
ルーベンスだけで4作品。まるで美術館のような教会だなあ。
観光客が多く来るのもわかります。

 

この絵はキリストの絵の後ろのほうに展示されています。
やはり気リストではなくマリアがテーマだからなのか、
とても華やかな色遣いの作品ですね。
高めの場所に掛けられており、まさに天に昇るマリアを
私たちが見上げるような作品となっています。

聖母昇天

 

ルーベンスほど有名ではないのでしょうが、
他にも沢山の絵画が壁を飾っています。
美術館でも宗教画はたくさん見ることができますが、
やはりキリスト教の絵画や彫刻というのは、教会で見るのがいい。
美術館のほうが湿度も調整されているし、明るいし、見やすく展示してくれますが、
暗めであっても宗教施設である教会の中で見るほうがいいです。
信仰を持たない私でも、そう思います。

 

その他、天井の高い場所にパイプオルガンがあったりして、
とにかくすごい教会でした。
それほど大きくはないのですが、色々と凝縮されている。
無駄とも思えるほどの過剰な装飾だけど、これもまた文化。
西洋人も日本の神社仏閣を見て、同じように感じるのでしょうか。

 

それから教会の床ですが…。
おそらく聖職者や教会のために尽力してくれた人たちなのだと思いますが、
教会の床に埋葬されている人たちもいます。
何となくこの上を歩くのは、気が乗らない行為です。
私は一生懸命よけて歩いていたのですが、西洋人はガンガンこの上を歩く。
あまり気にしないのかなあ。日本人は遺体を大切にする民族だと聞きますが。
亡くなった人に対する考え方も、日本とは少々違うのでしょう。

 

この教会の前の広場に、何やら石碑ができていました。
ネロとパトラッシュの石碑のようです。
「パトラッシュ、僕たちはいつまでも友達だよ」のような内容の言葉が、
なんと日本語で刻まれているのです。
うーん、何となくこれは恥ずかしいな。あのアニメは大好きだけどね。
「フランダースの犬」はベルギー人が意地悪に描かれているので、
ベルギーでは不評なのだそうです。ネロの死も「負け犬の死」としか考えないと。
まあ日本人だってあのアニメがなければ、この話は知らなかったと思いますよ。

 

帰りは別の道を通って、アントワープの駅まで帰ってみました。
広くて賑やかな通りでしたが、ブリュッセル中心のような観光地オンリーではなく、
人々の生活の匂いが感じられる、活気のある街でした。

 

街かどの建物や住宅も、このように立派なものがある。
やはりこういう歴史を感じさせる建物はいいですね。
日本でも時々とんでもなく立派な古民家を見ますが、
こちらの場合は石造りだし地震は少ないしで、
日本よりも保存がしやすいのだろうと思います。

 

アントワープに到着した時にチェックしておいた時刻表で、
オステンド行きの電車に乗ってブリュッセルに帰りました。
皆様も行かれる際は、時刻表の早めのチェックはお忘れなく。

それから最後に、ここのタイトルのアントワープの表記方法について。
最初のは英語、次はフランス語、最後がフラマン語です。
ベルギーはワロン地方(フランス語圏)とフランダース地方(フラマン語圏)があり、
言語だけでなく文化的にも、多少異なる生活を送っています。
政治的な対立もあったりして、色々と難しい事情があるようですが、ここでは割愛。
ちなみにアントワープはフランダース地方なので、フラマン語圏となり、
フラマン語での地名はアントウェルペンとなります。

 

EURO2008ベルギー編   3  

EURO2008ポルトガル編      

EURO2008フランス編      

EURO2008総合編   

湯でたこの温泉めぐりへ>>湯でたこ観光局へ