EURO2008~フランス編~

3:パリ市内駆け足観光

 

さて、そんなこんなでようやくパリにやってきた私。
パリに来るのも数年ぶり。
前回は1週間以上滞在して、美術館めぐりに時間を費やしました。
今回は2泊しか時間がないので、それ程たくさんのところへは行けない。
ピンポイントで、何箇所かへ足を運んでまいりました。
カテゴリー別に、色々と書いていきたいと思います。

 

その1:ノートルダム大聖堂(Cathédrale Notre-Dame de Paris)

パリの中心を流れるセーヌ川。
悠々と水をたたえていて、まさに母なる川という印象。
このセーヌ川には小さな中洲というか、島があります。それがシテ島です。
島と言っても結構大きく、普通に人が住んでおり、大きな建物もたくさんあります。
そこにあの有名なノートルダム大聖堂があります。
ノートルダムとはフランス語で「われらの貴婦人」の意。
これは聖母マリアのことで、この聖堂はローマ・カトリックの教会です。

 

シテ島へはメトロで。「Cité」という駅で降ります。
メトロのすぐ横には植物園があって、とても華やか。
ここからノートルダム大聖堂までは、歩いて10分ほどの距離です。
ここは小さな島ではありますが、パリの中心地となる場所。
フランス各地へのパリからの距離というのは、
このノートルダム大聖堂の前の広場を拠点として測定するのです。
なにせナポレオンの戴冠式まで行った聖堂ですから、
色々な意味でフランスの中心でもあるわけです。

 

このシルエット。名前を知らなくても、この景色には
見覚えのある方は多いのではないでしょうか。
ゴシック建築の建物で、とにかく大きい。
まさに見上げてしまうという言葉がぴったりです。

 

外観も壮麗なのですが、内部の美しさもまたすごい。
まさに宗教施設という感じの空気、薄暗い照明。
そして窓から差し込む光を受けて輝くステンドグラス。
細部にまで施された、見事な彫刻の数々。
実際にこんな荘厳な雰囲気の中で行われるミサというのは、
信者ではなくとも、敬虔な気持ちを持たせてくれそうです。

 

そしてこのノートルダム大聖堂には、展望台があります。
パリでもかなりの高さの展望台なので、さぞかしいい眺めの筈。
混雑する時はすごいと聞いていたので、開館10分前くらいから
列に並んで待ちました。
10時丁度になると、かなりの列の長さになっていました。
少々早めに並んでいてよかった。

 

この大聖堂は1163年から建築が始められ、完成は1345年。
200年近い歳月がかけられています。
そのくらい古い建物なので、当然ながらエレベーターはなし。
387段の階段を、ひたすら上ります。なんだか階段の多い旅行だなあ。
この階段も石を切り出して作られており、
本当に手の込んだ建造物だということがよくわかります。

 

階段のところどころに、採光用の小さな窓があります。
鳩が巣を作ってしまうのを防止するためでしょうが、
針金がたくさん窓辺に仕込んでありました。
どこでも鳩の被害というのは、深刻なのですね。

 

最後のほうは半ばぜいぜい言いながら、ようやく上り終えました。
さすがに金網がはってありますが、それでも高い!怖い!
風も強くて、えらい寒さです。
順路どおりに、回ってみましょう。

 

展望台は回廊のようになっていますが、一部とても狭い場所があります。
そこでは人間同士がすれ違うこともできないので、一方通行となります。
この表示のある場所に出たら、まずは鐘楼へ行きましょう。
反対に行ってしまうと、戻ってこれなくなります。

 

巨大な鐘。現在でも現役です。
今は機械仕掛けで鳴らしているのでしょうが、
昔は人力ですべて行っていました。
ユーゴーの「Notre-Dame de Paris」は、ここが舞台となったもの。
機械式になったとしても、数々の歴史を背負ってきたこの鐘が
現役で使われ続けていることが、とても嬉しかったです。

 

さすがパリを一望できると謳っている展望台。本当に素晴らしい眺めです。
遠くまで見えるというだけではなく、パリのごみごみした独特の雰囲気を
余すことなく感じ取ることができます。
回廊式になっているので、見えない角度がない。
白く煙ったパリの空から眺める市街地は、とても雰囲気のあるものです。

 

こんなものも見えました。この茶色いの、なんだかわかりますか?
これ全部、煙突なんですね。
パリというのは一軒家を建ててはいけない場所なので、全てアパートです。
WW2でドイツが攻め込んできた時にはオープン・シティにしたため、
古い建物がかなりの割合で残っています。
古い建物では、アパートの一つ一つの部屋の煙突が、
このようにまとめて屋根についている。ちょっと珍しい眺めですね。

 

展望台にも多くの彫刻がありますが、これはキマイラだそうです。
他にも悪魔と思しき彫刻や、魔物めいたものがたくさんありました。
彼らは14世紀にこの聖堂ができてから、ずっとこの場所にいる。
ここでずっとパリを眺めてきたのです。
700年にも及ぶ長い歴史を、まさに天上から見下ろしていた彼ら。
彼らと同じ位置に立ってみて、映画「ベルリン・天使の詩」を思い出しました。
今でも彼らは天使と同じように、空から私たちを見続けています。

 

 

その2:オルセー美術館(Musée d'Orsay)

芸術の都パリ。その名に恥じないくらい、パリには美術館がたくさんあります。
最も有名なのはルーブル、そしてオルセー美術館でしょう。
今回は時間がないので、オルセーのみにとどめて行ってみました。
前回はパリ・ミュージアム・パスというのを買って、あちこちまわりましたが、
今回はオルセーのみなので、普通に券を買って入ることにしました。

 

入口に近づくと…すごい行列ではないですか!
こんなに並んでいたら、中は大混雑ではないのか?!
と思ったら、どうもセキュリティが厳重になったらしく、
その為に入口が混雑していただけのようでした。
空港のセキュリティと同じように、金属ゲートを通らされます。
やはり911テロの影響でしょうか。
入るだけで、30分近くかかってしまいました。

 

とはいえ、入ってしまえばそこは芸術品の殿堂。
滅多に見ることすらできない絵画の実物を、心ゆくまで鑑賞できます。
日本に来る絵画もあるけれど、絶対に来ない絵もありますからね。
ゆっくりと観てまわりましょう。

 

「オランピア」です。なんとなく入った部屋で、いきなりの有名どころですが、
オルセーにはこのレベルの有名な絵画がゴロゴロしています。
しかも、日本でこのような有名な絵が展示されたら、
人だかりでゆっくりと眺めることすら難しいでしょうが、
ここでは余裕をもって鑑賞することができます。

 

またオルセーでもルーブルでも、写真撮影は
フラッシュさえ焚かなければOKです。
ベルギーやオランダの美術館もそうだったなー。
日本はダメなところがほとんどですよね。

これはマネの「笛を吹く少年」ですね。

 

カイユボットの「床を削る男たち」。
画家にしては珍しく裕福だったカイユボットは、
貧しい画家たちの作品を好意で多く買い付けていました。
そのコレクションの多くが、このオルセーに収められています。
この人がいなければ、今私たちはこの場所で
これらの絵画を眺めていられなかったかもしれません。

 

確かこの絵はビーンにめちゃめちゃにされた筈では…。
ホイッスラーの「母の肖像」でしたね。
あの映画はね、もう見ていられませんでしたよ。小心者なもので。

 

「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」はいくつかあるそうなのですが、
その中の一作。これも有名なものですね。
私はルノアールの絵というのは、あまり好きではなかったのですが、
実物を見てからは考えが変わりました。
やはり絵というのは、実物を見たほうがいい。
印刷では感じられないものが、本体にはあるような気がします。

 

知らない人の作品でしたが、今回見た中で一番怖かった絵。
どこがどう怖いのかというと説明はできないけど、
何か普通でないものを感じる。
この画家のことを、帰ってから調べようと思ったんですが、
いまだによくわかりません。
どんな物を見てどんな歌を聴いて、どんな人生を送ったんだろうか。
なぜこの絵を描いたのだろう。

 

大好きなゴッホも、たくさん飾られていました。
ゴッホの絵は、とても彼自身の気持ちが
絵に表れている画家だと思います。
その絵を描いた時、どんな気持ちだったのか。
それがダイレクトに感じられ、彼がこの絵に向かっていた時の感情が
そのまま絵に貼りついているかのような。
だから、絵によっては見ていると、とても不安な気持ちになります。

 

これは自殺する少し前に描かれた2人の少女の絵。
きっとこの頃ゴッホは、とてもとてもつらかったのではないか。
この絵の前に立った時、本当に胸がかきむしられそうになりました。
ゴッホを死にまで至らしめた苦しみは、今もこの絵に生きています。
私には難しいことはよくわかりません。
でも、絵を感じることは誰にでもできることなのだと思います。

 

ノルマンディのルーアンは美しい都で、
「住むならルーアン、遊ぶならパリ」という言葉もあるそうです。
モネはルーアンに住み、大聖堂を何枚も描きました。
私も一応車の中からルーアンの大聖堂は見ましたが、
運転に必死になっていたため、写真がありません。
オルセーに何枚も飾られていた、モネの絵の中の一枚です。
ああ、本物の大聖堂を実際にゆっくりと眺めたかったなあ。

 

ルーブルやオルセーでは、絵画の模写をしている人をよく見かけます。
勿論これは許可をとって行っているものですが、
日本だったら絶対に許可にならないだろうなあ。

 

前回来た時と展示内容が少し変わったりしていましたが、
短い時間で大きな満足感を得られました。
それは有名な作品が多くあるということだけではなく、
美術館の在り方そのものからも、得るものがあったからです。

 

私は今までパリ以外ではオランダやベルギーの王立美術館や、
もっと小さな規模の美術館(ブルージュのメムリンク美術館など)など、
数カ国だけですが、あちこちの美術館に行ってきました。
それらの美術館でよく出くわしたのは、学校の先生と生徒たちの集団でした。
授業の一環として、美術作品を見に行くのです。
小学生などは、他の見学者の邪魔にならないように絵の前に車座に座って、先生の解説を聞いています。

上記の美術館内での模写にしてもそうですが、欧州は美術へのハードルがとても低いのです。
作品が豊富にあるというだけでなく、普段の生活そのものに美術が入り込んでいる。
芸術の都の名に恥じない都市・パリ。
それは高名な美術館だけで感じるものではなく、この後訪れるモンマルトルでも痛感することになるのでした。

 

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