EURO2008〜フランス編〜

2:ノルマンディ

モン・サン・ミッシェルのすぐ近くに、ノルマンディと呼ばれる地方があります。
ノルマンディと聞いて、何が思い浮かぶでしょうか。
ノルマンディ上陸作戦、ノルマンディ公ウィリアム。
恥ずかしながら、私の世界史や地理の知識はその程度です。
今回の旅行でモン・サン・ミッシェルに行くにあたって調べ物をしていたら、
シードルやチーズの名産地だということを知りました。
しかも、しかもカマンベールチーズ発祥の地、カマンベール村まであるではないですか。
どうせ車を借りているんだし、行くしかない!とノルマンディ地方の地図を購入し、
モン・サン・ミッシェルからカマンベール村を目指しました。

 

カマンベールチーズというと、こういうのです。
白カビが表面について真っ白になってる、あれです。
やわらかくて癖が少なく、チーズに不慣れな人でも食べやすい。
表面の白い部分は食べてしまっても大丈夫ですが、
切り落として中身だけを食べるのが正しいようです。
カビの部分にも味があるので、除去したほうが食べやすいかも。
熟成が進んでくると、白カビの部分はオレンジ色に変化してきます。

 

そしてフランスの農産物にはA.O.C認定というのがあります。
詳しくはリンク先を見ていただくとして、カマンベールにもA.O.Cがあり、
ノルマンディのカマンベールに対してのみ、与えられるものです。
A.O.Cのチーズには、必ずこのように箱や包装にA.O.Cと表記されています。

 

そういうわけで、カマンベールチーズの故郷でもあるノルマンディ、
カマンベール村以外でもチーズ作りは盛んです。
これはフランスでも大手のGillot(「ギヨ」という読み方になるようです)という
チーズメーカーの工場です。大きいですねー。
もちろん見学などはせず(申込みもしていないし)、外から眺めただけです。
私がこの会社に興味を持ったのは、昨年こういう騒ぎがフランスであったから。
量産体制をとらずに生乳でのチーズ生産を続けている会社というので、
もっと小さなところだと思っていたので、かなり驚きました。

 

そしてしばらく走ると、ようやくカマンベール村の表示が見えてきました。
周囲には何もない、本当のど田舎。
広大な農地が続く場所をずっと走ってきたのですが、
このあたりは低いけれど山も丘もあり、他と比べるとアップダウンが多い。
見渡す限り広大な大地というのとは、少々違う印象です。

 

このカマンベール村というのはとても小さく、
「ここからカマンベール村」の表示が出てから1分も走らないうちに、
村終了の表示が見えてきてしまいます。
民家はとても少なく、道の横には牧草地と牛が見えるのみ。
住民は本来のカマンベール村より少し離れた場所に多い。
カマンベールチーズの資料館などもあります。

 

カマンベール村あたりで、現在チーズの製造を続けているのは、
このチーズ工房一軒のみです。デュランさんという方の工房です。
でも今はオフシーズンなので、お休み中。
従業員と思しき方がいらしたので尋ねてみると「close」とのことでした。
残念だけど、仕方ないですね。
村全体がお休みという感じで、チーズの資料館も休館中でした。

 

ここは裏に牛舎があり、たくさんの牛がのんびりとしていました。
ここで搾乳してチーズを作っているのか…。
正真正銘、何から何まで手作りの本場のカマンベールなのですね。
購入できなかったのは残念ではありますが、
こういう場所であの世界的に有名なチーズが産声をあげたのだと、
その雰囲気が感じられただけでも、来た甲斐があったというものです。

 

周辺にはやはり牧場が多く、乳牛や肉牛がたくさん見られます。
どこでも広い広い牧草地に牛が放牧されており、
のんびりと草を食んで食後の休憩をしていたりします。
こういう光景を見ていると、欧州でBSEが問題になったことなんて
嘘のように思えてきます。
だって配合飼料というよりは、本当に放牧されっぱなしという印象なんだもの。
牧場の規模も大きすぎて、そんな手間なんてかけていられないように感じますが、
実際のところはどうなんでしょうね。

 

そのあたりは牧場の規模などにもよるのでしょうが、
フランスの農場や牧場は、本当に広大です。
うろ覚えですけれど、有吉佐和子の「複合汚染」に書かれていたのですが、
シャルル・ド・ゴール空港はたった2軒の農家との話し合いで、
土地を入手したのだとか。
フランスは食料自給率が8割を超える欧州きっての農業国ですが、
それがフランスの強さの秘密なのだなあと、しみじみ感じさせられました。
日本も昔は国力をコメで換算していたわけで(加賀百万石とかね)、
食料の確保というのは、いつの時代も国の最優先課題なのでしょう。
なにせ人間、水と食料がなければ生きられないのですから。

 

そんな広大な農地の中を走って、車の返却場所であるルーアンに向かいました。
ルーアンはすっかり都会で、人口も多い。
駅の規模も大きく、貨物線などもたくさんあるようです。
いったいどこが人間の使う駅舎なのだか全くわからず、さんざん走り回りました。
町の細かい地図などもなかったのですが、こんなにわかりづらいとは。
本当に大変でした。

 

本来ならもっと早く到着して、ルーアンの観光もする予定でしたが、
車の返却時間すら過ぎてしまってから、ようやく到着する始末。
そして、予定していた電車にも乗れず、1本遅れた電車でパリに向かいました。
ルーアンは古い都市で、街の建築はゴシック様式が多い。
ジャンヌ・ダルクで有名でありますが、画家のモネも長年ここに居を構え、
大聖堂の時計台などを何枚も描いています(オルセーに展示されています)。
次回はもっと時間をとって、この歴史ある街をゆっくりしてみたいものです。

 

18時の電車に乗る予定で券も購入済でしたが、
仕方ないので15分あとの電車に乗り込みました。
今度の電車は、corailです。
TGVほど早くはないけれど、ルートも広い範囲にわたっており、
大きな都市間を結ぶ、とても便利な鉄道です。

 

さて私はパリからレンヌへのTGVで、ダブルブッキングを経験しました。
そして帰りのcorail。私が持っているのは、18時ルーアン発の券です。
それ以外の電車には乗れないはずです。それはフランスでも同じです。
事情を話して、車掌さんに追加料金を払うつもりでいました。
しかし、電車がとてもすいていたというのもあるのでしょうが、
検札に来た車掌さんは「うーん」という表情で券を眺めながらも、
私たちの乗車を許してくれたのです。
これが日本だったら、どうだったでしょうか。
おそらく、往路のTGVのダブルブッキングは鉄道側の手落ちとして
きちんと車掌さんが処理してくれると思うのです。
そして、帰りのICの乗車も、認められないでしょう。

それぞれのお国柄もありますし、どちらがいいとは言いません。
私が感じたのは、やはり日本とは違う国なんだな、ということでした。
どちらの対応も、日本ではありえないことだからです。
それぞれの国民性があって、それぞれのやり方がある。
日本でフランスの方法ではうまくいかないし、逆もまたしかりでしょう。
他にも色々と考えさせられることの多かった、実り多い2日間でした。

corail一等客車内

携帯使用OKの場所

パリ サン・ラザール駅

 

ノルマンディでの2日間。私は何人もの方に、助けていただきました。
まずは往路のTGVで、私たちの座席のことを心配して、声をかけてくださったお兄さん。
それから、車で立ち寄った小さな街のスーパーで、一つだけの買い物で並んでいたら、
「それだけなら先にどうぞ」と順番を譲ってくださったマダム。
ルーアンの街で中央駅の場所がわからなくて、フランス語が全くわからない私が道を尋ねたら、
自分のメモ帳を出して、一生懸命筆談に応じてくださったムッシュ。
最後に、結局中央駅がわからなかった私たちを、車で駅まで誘導してくださったマダム。
皆さん、本当にありがとうございました。
この方たちは、ホテルやお店の従業員などではありません。観光客からの利益のない人たちです。
単純に、皆さん親切心から、声をかけてくれたり、手を貸してくださったんだと思う。
私が彼らの立場に立った時に、同じようにできるだろうかと考えると、本当に頭が下がります。

海外では日本での旅行以上に、想定外のことが起こり得るわけですが、
今回のように「ここまで良い方向での想定外」というのは、初めてのことでした。
人様の親切が、本当に身に沁みて感じられた2日間。
私にとってのノルマンディでの一番の思い出は、優しいフランス人たちの無償の親切心です。
本当に本当に、ありがとうございました。

 

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