EURO2008〜フランス編〜

1:モン・サン・ミッシェル(Mont Saint Michel)

その3:モン・サン・ミッシェル

ようやく来ることができました、モン・サン・ミッシェル。
この海岸の干潟に浮かぶ小島だったこの場所は、
要塞としてイギリス軍と戦い、聖地として巡礼者を受け入れ、
修道院として僧たちが籠り、刑務所として囚人を受け入れました。
その立地の特殊性から、単なる小島にも関わらず、
数々の歴史の舞台に立ってきたのです。
今はフランスの有名な観光名所として、重要な役割を担っています。
1979年にはこの湾とともに、世界遺産に登録されています。

 

昔は干潮の時にだけ、干潟の一部が通行できるようになり、
その短い時間に急いで渡らなければならないという、
命がけで訪れる場所でした。
このあたりの潮の満ち引きは非常に早く、
見ているとあっという間に潮が満ちてくるのだそうです。
巡礼者たちは必死で渡ったことでしょうが、多くの人が渡りきれずに死亡。
ここへ巡礼に行く時は、遺書を書いていけと言われたのも昔の話。

1877年には島と大陸を結ぶ道路が完成され、現在に至ります。
駐車場も、すぐ目の前。楽々行けるようになりました。
しかしこの道のせいで潮の流れがせき止められ、堆積が非常に多くなった。
このままではどんどん陸地化してしまうので、かつての姿を取り戻そうと、
2009年にはこの道路は壊されて、橋がかけられることとなりました。

 

現在この島は、修道院として使われてはいません。
島に入ると、レストランやお土産物屋さんが並ぶ通りになります。
そこに観光バスから降りてきた観光客がわいわいと賑わっており、
なんというか、とてもわかりやすい観光地なのです。
島の中にホテルもあって、勿論宿泊できますよ。
でもオンシーズン中は混むらしいので、早めに予約したほうがいいかも。

 

ぶらぶらと島内を散策していると、かつての修道院の前に出ます。
有料で見学を受け付けています。
古い建物なので、エレベーターなどはありませんので、
そのつもりで。

 

この見学コースの途中に、周囲が見渡せる広いテラスのような場所があります。
本当に周囲に何もないので、後ろの建物がある場所以外を見渡せる
大パノラマの景観が広がります。
ここで休みがてら、干潟を眺める観光客多数。
空と世界の広さを実感できる場所でした。

 

遠くのほうに、この島よりもさらに小さな小島が見えます。
この写真ではわからないけれど、よく見るとここにも建物が。
島へ渡る道路の代わりとなる橋脚完成時には、
この小島へも渡れるようにするそうです。
ここは本当に取り残されたような場所ですので、
一体どうなっているのか、とても楽しみであります。

 

修道院の回廊です。
今は日光がさして眩しいくらいだけど、
夜などはきっと本当に真っ暗になるんでしょうね。
島内のホテルに宿泊すると、夜は恐ろしいくらい静かだと聞きますから、
ここも同様、というよりも、もっと静かで暗いのでしょう。
昔の修道士や巡礼者は、このような場所で祈ったのでしょうか。

 

建造物自体は巨大ですが、飾りの要素はあまりありません。
西洋の教会というと、やたら豪華な彫刻があったり、
煌びやかなステンドグラスがあったりしますが、ここは極めて質素。
回廊の天井などは、木でできていました。
まあこんな場所にこんなでかい建物を建てるだけでも大変です。
道ができてからはともかく、最初はどうやって建てたんでしょうね。
引き潮の間に建材を運搬したんでしょうけど、すごいです。
なにせ、渡るだけで大変だった干潟なのですから。
宗教というのは、時に人をとんでもない行動に走らせますが、
この建物も例外ではないと思います。

 

飾り的な要素が少ないとは言っても、やはりそこは修道院。独特の雰囲気があります。
とにかく西洋の建物というのは、日本に比べて照明が格段に少ないので、
廊下などは本当に暗かったりする。それが雰囲気を出していて、いいんですが。
建物の奥に伸びる暗い廊下を見た時は、映画「薔薇の名前」を思い出してしまいました。

 

午後になって日が傾いてくると、
干潟にくっきりと建物のシルエットが浮かび上がります。
この影だけ見てもモン・サン・ミッシェルだとわかるのは、さすがです。

 

島内をくまなく見て歩けば、それなりの時間がかかると思います。
私はざっと見ただけなのですが、3時間以上かかりました。
しかしオフシーズンだというのに、日本人だらけだったなあ。
そのことに、びっくりしました。

私は1泊しましたが、パリから日帰りのバスツアーも沢山出ています。
それを利用して、夕方には帰ってしまう人も多いようです。
でも私は夕暮れや夜明け、夜のモン・サン・ミッシェルを見たかったので、
島内のホテルではなく、ここから2kmほど離れた場所に宿泊しました。
そして、夜や夜明けの凍えるような寒さの中、車を飛ばして見に行きました。

 

その4:外から眺めるモン・サン・ミッシェル

 

モン・サン・ミッシェルから2kmほど離れた場所にホテルが点在しています。
モン・サン・ミッシェルの門は、21時頃には閉まってしまうので、
夜遅い時間に、外から眺めることはできません。
別に21時以降でなくてもよいのですが、どうせ車を出すのなら
島の外に宿泊したって同じことです。
なのでそれらのホテルの1軒に予約をとりました。

 

ここがそのホテル、サン・トベール
やはり夜間や夜明けにモン・サン・ミッシェルを見に行ったり、
外のレストランに行ったりする人がほとんどなので、
玄関は常時施錠で、暗証番号で入るようになっています。
チェックアウトは、フロントに鍵をこのように置いておくのみ。
気楽ではありますが、ちゃんとチェックアウトしたかどうかを
全く確認しないで、掃除のおばちゃんとかが部屋に入るので
よくよく注意してください。

 

さて、何度も車を往復させての、夜と夜明けの見学ですが、
ここで一つ、大切な注意。
冬の間は、とにかく寒い!もうね、とんでもなく寒い!
どのくらい寒いかというと、朝には車がこんなことに。
雨や雪が降ったわけじゃないんですよ、ただ凍りついただけ。
長時間の暖気運転が必要でした。
真冬に行かれる方、相当の防寒対策をしてください。
夏場でもこのあたりは、かなり涼しいのだそうです。

 

まずは、夕暮れのモン・サン・ミッシェル。
地平線に、真っ赤な夕日がゆっくりと沈んで行きます。
日が傾いてくると、建物の陰影も濃くなって、
昼間とは違う表情を見せてくれます。
一眼レフなどではない、オートフォーカスのカメラですが、
露出を変えたり輝度の変更をしたりで、
色々と撮影してみました。
ひたすら並べますので、どうぞご覧下さい。

 

 

 

 

夜のライトアップも美しいけれど、
やはり一眼レフでないと、うまく撮れなかったです。
というので、一枚だけ。

そして翌朝、車がこのように凍りついている中、
真っ暗な中をかっ飛ばして、夜明けを見に行きました。

 

朝の7時頃。まだこんな暗さです。
緯度が高いせいか、日の出が非常に遅いのです。
でも徐々に明るくなっていく様をゆっくりと見ることができて、
本当に感動しました。
夕暮れとはまた違う、夜明けのモン・サン・ミッシェルをご覧ください。

 

 

 

 

指先や耳たぶの感覚がなくなってしまうほどの寒さも忘れて、
私は朝日に照らされて浮かび上がってくるモンサンミッシェルを
ただずっと見つめていました。
この島には長い歴史があるわけですが、そういうことは抜きにしても、
この場所にこういうものがあること、この美しい建物があること、
そのことだけで十分に感動できた1泊2日でした。
私は個人的には島の中よりも、外から眺めているほうがいい。
遠くからでも、あのシルエットが浮かび上がってくるのを見るだけで、
いいあらわせない気持ちが湧きあがってきました。
子供の頃にカレンダーの中に見た、嘘のような光景が目の前にある。
幼かった自分に会えたら、教えてあげたいと思います。
あれは嘘でも幻想でもなく、本当にこの世にある場所なのだと。
そして、私たちにとっては特別な場所であっても、この村で生まれ育った人もいて、
そういう人にとってこの光景は、ごく普通の日常であるのだと。
自分が普段、当たり前に目にしている日本の風景も、ここと同じかもしれないのです。
幸せの青い鳥が、結局家の中にいたのと同じように。

 

次はノルマンディと、パリ市内駆け足観光へと続きます。

 

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