EURO2008〜ポルトガル編〜

9:モンサント(Monsanto)

のどかな田舎の道。
驢馬に荷車を引かせているおじいさんとすれ違うような、
そんな道を静かに走っていると、徐々に周囲の光景に岩が増えてきます。
石ではなくて、岩。巨大な岩が、ごろごろとしているのです。
そのような光景の中を走っていくと「最もポルトガルらしい村」と言われる
モンサントが見えてきます。

 

モンサントとはMont Saint、つまり「聖なる山」。
岩だらけのごつごつした異様な山は、その昔信仰の対象とされました。
今はごく普通の観光地となっており、人々が日々の暮らしを営んでいます。
最もポルトガルらしい村とは、一体どんな村なのでしょうか。

 

細い岩組の柵の道を上っていくと、見晴らしのよい駐車場があります。
駐車場は10台も停めればいっぱい。オフシーズンなので、すいていました。
ポルトガルではどの町にでも小さな駐車場が大体あります。助かります。
この村は車で回るような場所ではないので、ここから歩きます。

 

駐車場から見える、なんとものどかな風景。
色合いと言い雰囲気と言い、まさにポルトガルです。
なるほどなあと思いながら、路地を歩きだした私の目に飛び込んできたのは、
今まで全く見たことのない光景でした。

 

とにかくどこを歩いても岩だらけなのです。
遠くから山を見ていて、岩だらけだなあとは思いましたが、
集落の中にこれだけ岩が存在するとは。
しかもどれもみな巨大な岩なのです。
岩と家々が、混在して溶け合っているかのようです。

 

家の横に岩 岩で作った教会 岩の隙間に家 あの岩、落ちないのか?

 

岩が屋根になっている 岩の間に可愛いドア 岩が屋根にめり込んで? 天井板はなし、いきなり屋根

 

でも何といっても一番びっくりしたのは、これだな。
レストランかカフェのようだったけど、休業してた。
それにしても、この岩・・・不安にならないのでしょうか。
下の椅子と比べると、どれだけ巨大な岩なのかが
お分かりかと思います。見ていて怖かった。

 

観光地ですので、お土産物屋さんもあります。
オフシーズンですが、営業していました。
おばあさんが1人で店番をしていて、お手製のチーズなども売っていました。
モンサントの岩の特徴を出した置物など、色々ありました。

 

この村で唯一の宿泊施設のポザーダです。
その他、酒場の家が2階の空き部屋を貸しているそうで、
観光地とは言っても、規模はとても小さい。
しかしながら、インパクトは十分すぎるものがありました。

 

前回の旅行で行きたかったけれど行けなかったモンサント。
「最もポルトガルらしい村」なのか?と言われると、ちょっと疑問ではあります。
岩と共存して生活している場所というと、カッパドキアが有名ですが、
この村の岩との共存は、カッパドキアとはまた違うものでしょう。
岩の中に住んでいるというよりは、岩を利用して人々は今でも生活しています。
昔、信仰の山だった場所は、今では静かに時間が過ぎゆく村となっています。

 

10:ペーニャ・ガルシア(Penha Garcia)

モンサントから少しスペイン寄りに行ったところに、
Penha Garciaというところがあります。
地図でたまたま見つけたのですが、ネットで検索してみると、
なんだか音楽関係の記事ばかりがひっかかる。
どうもこういう名前のグループがいるようですね。
それ以外に、この土地の写真で気になるものが見つかったので、
モンサントの次に立ち寄ることにしました。

 

集落の中心に、泉らしきものがありました。
このペーニャ・ガルシアについて、日本語のページは殆どない。
上記のリンク先の英語ページによると、12世紀頃にはお城があって、
14世紀頃に教会が造られたそうです。
化石がたくさんでる場所としても知られています。

 

ここはモンサントほど岩がない土地だからなのか、
古い家もあれば、新築と思われる新しい家もあります。
それらが混在していますが、不思議と集落の雰囲気は壊れていない。
新しい家は、白い壁のものがほとんどでした。

 

そのお城があった場所。勿論、一番高い場所にあります。
敵兵からの見張りも兼ねていたと思われるので、
眺望はかなりいいはずです。
のんびりと、登ってみることにしました。

 

少しずつ登っていったのですが、これがなかなか怖い。
階段の横には勿論手すりなんかないですし。
眺めは勿論いいのですが、その分恐怖感も倍増。
時々立ち止まって下を眺める度に、
お尻のあたりがむずむずするような感覚にとらわれました。

 

途中まで登ると、渓谷らしきものが見えてきます。
切り立った崖というのではなく、岩が連なって傾斜を作っている。
小さな家が見えるでしょう?その下あたりから降りることもできます。
私は時間がなくて断念しましたが、下に数人の人を見ました。
しかし、あの家の人、怖くないのかなあ。
あんな崖っぷちに家があるなんて・・・。

 

で、さらにその渓谷を覗きこむと・・・。
これですよ、これ!私が見たかったもの!
ダムでせき止められた先の小さな川の横に、まるで崩れそうな家がたくさん並んでいる。
なんだか嘘のような光景ですが、本物です。これが見たかったんです。
左の写真は、日光が強すぎてわかりにくいかもしれませんが、右の写真は家の部分の拡大図です。
なんというか、すごいなあ。今は誰も住んでいないようだけど、昔は誰かがここに住んでいたのでしょうか。
はっきり言って、とんでもない環境です。

  

これらの古い家は、空き家も勿論あるけれど、
今でも普通に使われており、煙突から煙が見られたり、
家の前に洗濯ものが干されていたりします。
道の横にあるこの窓も、住んでいる人のいる家の窓なのです。

この村やモンサントでは、マウンテンバイクの大会が開かれます。
この狭い道を、自転車に乗った選手たちが疾走します。

 

モンサントもペーニャ・ガルシアも、はっきり言って生活は大変だと思います。
ここに来る途中、薪を拾っているおばあさんをみかけましたが、
生活のインフラが我々の生活ほど、完備しているとはとても思えません。
住宅事情だって、そこまで良くはないでしょう。
しかし、所謂「遅れた生活」であっても、テロリズムなどからの無縁や
時間をせかされる生活との無縁などを考え合わせた時に、
何が本当の幸せなのかということを、考えざるをえませんでした。
近代化されていくことも幸せの一部ではあるでしょうが、
それと同時に失っていくものも沢山あるのだろうな、と感じました。

この国の忘れられたような田舎の村には、ゆったりとした時間が流れています。

 

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