太古の森に会いに行く〜屋久島〜 その2

1:島へのアクセス

屋久島へ行くには、空路と海路があります。
鹿児島空港からそのまま飛行機に乗っていければ楽だったのですが、
私が屋久島行きを思いついた時には、すでに空路は売り切れ。
それなら海を使うしかありません。
フェリーもありますが、やはり速い高速船がいいでしょう。

 

私が今回利用したのは「トッピー」です。
トッピーとは、トビウオのこと。トビウオはこのあたりの名産ですね。
トッピーは鹿児島と屋久島・種子島を結ぶ路線で、
鹿児島から直接屋久島へだと約2時間。
種子島経由だと、もう少し時間がかかります。
観光シーズンだととにかく混むので、予約をしておくのが無難です。

 

高速船はフェリーとは違うので、航行が始まってからは
船内をうろつくことができません。
かなりのスピードで進むので、座席に座ってシートベルトをすること。
勿論トイレなどの時は立てるのですが、基本的には座ったままです。
ごくたまにですが、鯨と衝突したりすることもあるそうなので、
やはりしっかりとベルトをしておくのがいいでしょう。

 

高速船にはもうひとつあって、こちらは「ロケット」。
こちらも鹿児島と屋久島・種子島を結ぶ路線です。
料金はほぼ同じ。今度行く時は、こっちを使ってみようかな。
時間的にも変わりません。

ただし高速船のターミナルは、いずれも鹿児島の中心地・天文館からは
少し離れていますのでそのつもりで。
また、繁忙期にはダイヤが変更になることもありますので、要注意です。

 

2:島をぐるっと一周 小さな観光スポット

屋久島は周囲120km、直径約30km。
周囲の無数の小さな島と比べると、かなり大きな島です。
でもぐるっと一周ドライブするには、とてもいい大きさ。
レンタカーを借りて、島の周回道路を一日かけてゆっくりとまわってみました。
すると「屋久島フルーツガーデン」なる看板があるではないですか!
やはり南国だもの、トロピカルフルーツは楽しみです。
早速車を停めて、寄ってみました。

 

入口から案内看板の通りに進んでいくと、
「果実庵」なる南国風の建物があります。
私は行ったことないけど、バリ島などの南国リゾートを思わせる外観。
そして中は…

 

中も思いきり南国でした。
いや〜、見てください、この大量に盛られた色鮮やかなフルーツ!
ここではこれらが食べられるだけではなく、
この果物を加工したジャムなどもお土産に買うことができます。

 

左の写真が、そのフルーツのアソート。
これが入場料代わりで、500円です(写真は2人分)。
真ん中のがスターフルーツ、その上がパパイヤ、
時計回りにドラゴンフルーツ、バナナ、パッションフルーツです。
普段の生活ではまずお目にかからないものばかりで、
とても美味しかったので、右の写真の紅イモアイスも注文。
かすかに感じるお芋の味が、とても爽やかなアイスでした。

 

ガイドさんによる園内の案内があるというので、ついていきました。
もう小屋の周囲は、とても日本とは思えない眺め。
この写真だけ見せて、東南アジアだよ、と言っても信じそうでしょ?
園内には初めて見る植物ばかり。
15分ほどの短い案内でしたが、とても興味深い時間を過ごせました。

 

さっきいただいた盛り合わせのフルーツが、このように普通に実っているのがすごい。
お花もハイビスカスのような南国の花があちこちに咲き乱れ、巨大なシダやヤシの木があって。
日本にこんな場所があるなんて!と、驚きの連続でありました。

 

これはタコの木。確かにタコのようです。
タコの木は、諸星大二郎の「マッドメン」で、名前だけは知っていましたが、
実物を見るのはこれが初めてでした。
「マッドメン」は、ニューギニアの森を舞台にした壮大な物語で、
ヒロインがタコの木の森に行くシーンがあるのです。
読んだ時からタコの木というのは気になっていましたが、
本当にこんな形状だとは。
偶然にも目にすることができて、とても嬉しかったです。

 

この写真は、私が宿泊した民宿の庭のグアバとパイナップルです。
特に栽培しているわけではなく、やはり自然に実るのだそうです。
生まれて初めて、生のグアバを食べました。甘くて酸っぱくて、本当に美味しい!
とれたての味というのは、また格別です。絶対にお店では味わえない。
自然そのものの味、今でも思い出されます。

 

志戸子というところを走っていると、「志戸子ガジュマル園」という看板が目に入りました。
ガジュマル。名前は聞いたことがあるけれど、実物を見たことはありません。
早速車を停めて、入ってみました。
入場料は200円と、とってもリーズナブル。

 

受付を過ぎると、目の前に道が伸びています。
周囲にはガジュマルだけでなく、他の木も植えられている様子。
眩しい木漏れ日の中を、ガジュマルに囲まれて進んでいきます。

 

これがガジュマルの木。私たちが普段見ている木とは、色々と異なる点が多い。
まず全体的に、曲線ばかりで構成されているように見えます。
屋久杉もそうでしたが、私たちが知っているまっすぐ空に伸びている杉ではない。
色々な木が合体して、融合していき、何とも不思議な形を作り出しています。

 

ガジュマルの最大の特徴は、この「気根」と呼ばれる根です。
これは地中に発達する根とは違って、枝から成長して垂れ下がるもの。
左の写真のように、まるで動物の尻尾のように下がりながら成長し、
右の写真のように、いずれ地面につくようになります。

 

そしてこのように、最終的には土について根を張ります。
こういう気根があちこちから垂れ下がり、どんどん株のように増えていく。
そしてそれらが融合して、もともとの木は細かったのに、
巨大な木に成長していくのです。
このガジュマルの中のトンネルは、人間がらくらく通れるくらいの大きさ。
このようにどんどん気根が伸びて周囲を侵食していくので、
家の近くにはガジュマルが根付かないようにしているのだそうです。

 

これらのガジュマルを見ていて、何かふと不思議な感じがしました。
以前これと似て非なるものを、私は見たことがある。
しばし考えて「あ!」と思いだしました。
ポーランドの画家、ベクシンスキーです(リンク先音が出ます、注意)。
特にこのギャラリーの中にあるこの絵とかこの絵とかこの絵なんかは、
とてもガジュマルのこの何とも言えない不気味な外観と
共通したものがあるように感じます。
ベクシンスキーの絵は、この世のものではない別の世界を感じさせますが、
ガジュマルの木からも、別世界の植物のような印象を受けます。
静と動が巧みに合わさった、この奇妙な生き物。
そう、生き物という言葉がぴったりくるという感じです。

 

100年を生きたガジュマルにはキジムナーという木の精霊が住むと言います。
普段は科学という信仰にどっぷり浸っている私ですら思います。
キジムナーはいますよ、絶対に。
ガジュマルの林に来て、ガジュマルに会えば、そこにキジムナーを感じる筈です。
森の精霊は、今もガジュマルの木の中に生きています。

 

 

宿泊した民宿のすぐ近くに、「シドッチ神父上陸の地」という碑がありました。
シドッチ神父って、誰?と思ったら、検索かけたら結構出てくるものです。
今から300年ほど前に、ここに上陸したイタリアの神父さんだそうです。
島民に発見されて、その後長崎に送られて、若くして死亡しています。
島に来た時は侍姿で、帯刀もしていたと言いますが、
マニラで侍の服装などを用意してきたという説もあるそうです。

 

シドッチ神父にちなんだものでしょうか、小さな教会があります。
このすぐ横に丸く見えるのは、シドッチを援助した島の人の記念碑で、
上陸記念碑はもっと海沿いにあります。
どうもシドッチ神父はたった一人でここに来たようなのですが、
言葉も全く通じず、何もかも西洋とは違う日本に来るのに、
たった一人ではさぞかし不安だったことでしょう。

 

教会のさらに奥にある海岸線です。
かなり切り立った険しい崖で、なだらかなところもあるものの、
上陸に決して楽な場所ではなかったと思います。
歴史の表舞台に出てくる人というのはほんのわずかで、
殆ど名を成さない無名の人々も歴史を刻んできたのだということを
この日しみじみと感じたのでありました。

 

屋久島はウミガメが産卵に来ることでも有名です。
大体5〜6月頃散乱して、7〜8月頃孵化するのだとか。
永田浜という浜もウミガメの産卵地なのですが、
高度成長期にコンクリートの砂をたくさん採取したとかで
砂浜がどんどん小さくなっていきました。
(かつては海砂をコンクリートに使用していたこともあるそうです)
それに危機を感じた学者さんが、ウミガメの産卵地ということで
ラムサール条約の登録地にして、保護したのだそうです。

 

現在は白い砂浜が広がる海水浴場になっている永田浜ですが、
ここにウミガメ館があります。
アカウミガメとアオウミガメの生態や保護についての展示で、
入館料は200円とやはりリーズナブル。
中では希望すれば、係員の方から詳しい説明を受けることもできます。

 

ウミガメは成亀になるまで約30年かかり、
浜で生まれてから30年かけて世界中を回遊して
また生まれた浜の付近に帰ってくるのだそうです。
成亀になれるのは、卵5000個のうち1個くらい。
熾烈な生存競争に勝ち残ったカメだけが、ここに戻ってくるのですね。
中では赤ちゃんカメを見ることもできますよ。
バケツの中でパチャパチャと泳いでいて、とても可愛らしかったです。

 

もう海水浴シーズンも終わって、静かな永田浜。
カメはこの砂浜に50cmもの穴を掘って、産卵するそうです。
シーズンになれば、夜の海岸で生まれた小亀たちが
海に帰っていくのを見ることも出来るそうですよ。

 

さて、9月と言っても、まだまだ日差しの強い南の島。
一湊海岸という場所で、少しのんびり日焼けでもしてみることに。
ヤシの木が見えて青い海が見えて、目を細めるくらいの眩しい日差し。
本当に南国なんだなあという景色が広がっています。

 

浅瀬で磯にはタコなどもたくさんいるそうで、
まだ泳いだりシュノーケリングしたりしている人を多く見ました。
でも水はやはり冷たかったので、私は砂浜でのんびりお昼寝。
午後の日差しは強く、肌がじりじりいうのがわかります。
冷たい海で泳いだあと、砂浜で日差しを浴びて暖をとる人も。
もっとハイシーズンに来れば、きれいな海の中を見れたのかなあ。

 

誰かが小石と小枝で作ったであろう、屋久島の文字。
なんかね、見ているだけで微笑ましくなりました。
きっとこれを作った若者(でしょう、きっと)たちは、
屋久島に来て、とてもとても楽しかったのだと思います。
小さな南の島でありながら、とても素敵な思い出を作ってくれる、屋久島。
「また来たいね」と言いながら文字を書く、彼らの姿が目に浮かぶようで、
私も同じくらい、いやもっと、楽しい気分になれたのでした。

 

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