【2006年9月13日(水)】

津軽海峡竜飛岬〜階段国道と三厩村漁村風景、青函トンネル体験坑道〜

 

湯でたこ、階段国道のカウントに失敗し、情緒漂う漁村の光景を眺める

 

♪ごらん、あれが竜飛岬 北のはずれと〜♪
と石川さゆりの「津軽海峡冬景色」で有名な竜飛岬。
実は竜飛岬へ行き着くには、かなりの高さを登らなければなりません。
そのため、このような急カーブの連続。行きも帰りも2速走行。
冬はスリップ必至のこの道は、冬季閉鎖となっています。
かなり登ってから下を見ると、道と緑と海のコントラストが美しい。

 

で、その急な坂道を登りきって、竜飛の灯台の近くに、階段国道があります。
この国道だけ独立しているわけではなく、小泊のほうから続いている339号線の延長。
このように目立つ表示もされているので、誰でも見つけられると思います。
階段の数は362段。339段にしてくれれば、覚えやすいのになどと思いながら、
段数を数えて下りはじめました。

 

このように舗装された階段。道の両側には、紫陽花が茂っています。
まだ咲いている紫陽花もあるのですが、他の場所ではコスモスが咲いており、
季節感がどうも狂いがちです。
1段2段3段・・・と順調に数えていったのですが、途中で思いがけない難関が。

 

こういう中途半端な階段・・・これ、どうすりゃいいの?
こういうのが何段かあって、それを数えたらいいのか悪いのか悩む。
しばし考えて、行きではカウントし、帰りはカウントしないことに。
そんなこんなで、順調に下りていきました。

 

途中までは閑静な草木の茂る中の階段という感じでしたが、
途中からこのように開けた光景となります。
目の前に海も見えて、階段ではない普通の道へ。
そこが終わると、路面がピンクで彩られたゾーンへ突入。
ここも途中までは普通の階段だったのですが・・・

 

途中からはこのように民家の間を通る道となります。
一見普通の路地だけど、これは国道。
教えてもらわなければ、ちょっとわかりません。
路地の向こうから犬が一匹、見慣れない私を見つめていました。

 

途中のスペースにはこのように蟹漁の篭が干してあったり、
地方でよく見る漁村の風景です。
ここが階段国道でなければ、見知らぬ観光客が通ることもないような道。
有名な国道であるがゆえに、家の前を様々な人が通るという状況を、
ここの人たちはどう感じているのでしょうか。
商店ならばお客さん候補が沢山通ったほうがいいに決まってますが、
普通の民家ですからね。
なんとなく複雑な気分だろうなあと思いました。

 

そしてここが階段国道の終点です。
ちゃんと逆三角形の国道表示もありますね。

さて、階段のカウントですが・・・
行きも帰りも、362段にはなりませんでした。どちらも微妙に数段ずれてしまった。
あの中途半端な階段を、どのように数えたら362になるのでしょうか。
再チャレンジする気力がなかったのですが、また行った時にはどうしようかなあ。
数えてみるかな。

 

さて、竜飛崎近くの三厩村の漁村は、大変風情のある光景で有名です。
海岸沿いの道に沿って並ぶ家々、その道を挟んで反対側に並ぶ番屋。
網やブイが干してあったり、昆布やイカが干してあったり。
見たことのない風景でありながら、どことなく懐かしさを感じさせるその家並みは、
田圃や畑の田園風景と同じように、日本人の心の奥の懐古心を刺激します。
静かな光景でしたが、眺めていると時間が止まったように感じました。

右の写真は少し場所が離れますが、イカの一夜干を焼いてくれます。
適度にふった塩がたまらなく美味しかった!海岸沿いにはこのようなお店が沢山。
このあたりに寄ったら、是非とも食してみてください。

 

三厩村の漁村の風景。とても静かで、見つめているだけでじんとくるものがある。

 

青函トンネル記念館と体験坑道

 

青函トンネルは昭和63年に開通した、世界最長の海底トンネルです。
その後、ドーバー海峡などにも海底トンネルが掘られましたが、
現在でも青函トンネルは世界一の規模。
竜飛岬にはその入り口があり(下り車両が進入するのが入り口です)、
列車がトンネルに吸い込まれていくのを見ることができます。

 

そのすぐ近くには「青函トンネル記念館」があり、
工事の様子などをパネル展示やビデオで見ることが出来ます。
「プロジェクトX」でも青函トンネルは取り上げられましたが、
ここでの展示やビデオは人間ドラマというよりは、技術的な解説が多い。
かなりの難工事だったため、この工事の過程で開発された技術も多く、
それらは今でも世界各国のトンネル工事に役立っています。

 

展示の中で印象的だったものの一つ。小学生の版画です。
青函トンネルの工事過程を、生徒が場面ごとに版画にしたもの。
これは大出水の様子を描いたものです。
やはり三厩村の子供達にとっても、青函トンネルは村の語り継ぐ歴史であり、
生徒の父親が事故に巻き込まれたりしたこともあって、
誇らしく、そして悲しい出来事となっているのでしょう。

 

そんな青函トンネルの坑道の一部に入ってみることの出来る、
「体験坑道ツアー」が毎日催されています。
一日に何度も組まれており、予約も不要。
記念館の展示物を見た後、これに参加することにしました。
記念館での映画や展示などを見て、実際の工事について、
多少の知識を持ってからの参加のほうが、いいと思います。

 

実際の坑道は海底にありますので、そこまで下りていくわけですが、
そこまではこのケーブルカー「もぐら」号で行きます。

 

トンネルの入り口が少しずつ開いていきます。
この駅はアルペンルートのような観光的な要素はなく、
天井からクレーンが吊られているような、作業所のような場所。
この扉はケーブルカーが動く時以外は、かたく閉じられています。

 

ゆっくりと下りていくケーブルカー。
特にスピード感はないのですが、線路を見上げるとやはり迫力。
壁には「水面下○m」などの表示が所々にあり、
海底に下りていくのだと、改めて感じさせられました。

 

そして体験坑道の駅に到着。
今ここがまさに「海底」よりも深い場所なわけですが、
たった7分間しか下りてきていないので、ピンとこない。
海底の坑道にいるというのは、なんだかとても怖いのですが、
地震が来ませんように、と祈りながら、トンネルに入りました。

 

係りのお姉さんの誘導に従って進みます。
途中で工事の様子のパネルや、実際に使われた道具の展示が出てきます。
そのパネルの説明をするアナウンスが流れて、それに沿って進む。
坑道内はひんやりとしており、独特の湿気があります。

 

実際に使われていた、工具や土砂の運搬車。
オーソドックスな工事道具だけでなく、
この工事で開発された機械類などの展示もあります。

 

先日岐阜の神岡鉱山のGSAに参加してきたばかりですが、
そこでは発破を仕掛ける穴を穿つのに、重機を使用していました。
ここではもっと簡素な機械で、左の写真のように人間が操作していたようです。
その他にも色々な機材が置いてありますが、全て実際に使用されたものです。

 

坑道で一番恐ろしいのは落盤事故。
ことに海底トンネルの場合は、土砂だけでなく水まで押し寄せてきます。
青函トンネルの工事も、何度か大出水に見舞われましたが、
それを未然に防ごうと開発されたのが、この「吹きつけコンクリート」。
コンクリートと液状ガラスなどを混ぜ合わせて、掘りながら吹き付けたり、
あちこちに注入したりして、進んでいったそうです。
黄色いタンクは、その薬剤の撹拌機です。

 

青函トンネルの坑道は、実は3本掘られています。
本坑の他に先進導坑(先に掘り進み、地質などを調べていく)、作業坑です。
このツアーで実際に歩けるのは作業坑。
この北海道と書かれたパネルの400m奥には本坑があり、竜飛海底駅があります。
プロジェクトXの青函トンネルの回も勿論見ていた私は、このパネルを見て
「さあみんな、北海道へ行くぞ。あれが約束した北海道だぞ」を思い出し、
じんとくる気持ちを抑えることが出来ませんでした。

 

竜飛岬には津軽海峡冬景色の歌碑もありますが、
青函トンネルで命を落とした、工事関係者の慰霊碑もあります。
殉職した彼らが最後に見たであろう津軽海峡の景色をバックに、
ひっそりと存在する慰霊碑に手を合わせて、竜飛を後にしました。
もうすぐ青函トンネルを新幹線が通る計画もあります。
彼らの仕事は技術の向上とインフラの整備に大きく貢献しただけでなく、
度重なるアクシデントにも負けずやり遂げることの大切さや、
本当の仕事とは何か、人間は一生を使って何をすることができるのか、を
教えてくれたように感じました。
冬場は誰も訪れることのないこの高台で、
彼らの魂は今でも静かに眠り続けています。

 

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