【2006年5月6日(土)〜5月7日(日)】

黒部峡谷鉄道に揺られて

 

以前より黒部峡谷鉄道には乗ってみたいと思っていました。
ついに終点である欅平周辺の温泉探訪を兼ねて、念願の初乗車。
立山観光のピークシーズンは夏場であるため、GWは意外に狙い目だとのこと。
でもやはり混雑しそうなので、GW真ん中は避けて、行ってまいりました。
始発は立山の麓の温泉街、宇奈月。既に多くの人で、ごった返しています。
駅舎のすぐ近くには旧車両も置かれており、小さな子供達が夢中でした。

 

黒部峡谷鉄道は、黒部ダムとその周囲の発電所の為にひかれたインフラです。
もともとは資材運搬のためだけの路線でしたが、観光にも開放しています。
これはトロッコなどを引っ張る、先頭車両。
運転席などはとても小さく、可愛らしい外観ですが、パワーは凄いです。

 

黒部峡谷鉄道といえばトロッコ列車というくらい、トロッコは有名。
壁や窓などはなく、鎖が張られただけの、簡素なものです。
左は外から見たトロッコ、右は乗車しての目線でのトロッコ。
夏場は快適ですが、GWあたりだと、ちょっと寒いこともあります。

 

やはりトロッコだと怖いし、窓があったほうが・・・という方は、
こちらの特別車両をどうぞ。雨風も防げます。
窓は開けたくなったら開けられますし、足元に風が来ないので、
足が冷える方にはこちらのほうがいいかもしれません。
これらの他にも、天井がガラス張りの車両もあります。
いずれも列車の時間指定をして切符を買うため、
予約しての切符購入は難しい。現地で買うことになります。

 

そしてこれらの貨車を引っ張って、現代の秘境とも言える黒部の奥地へ入っていくのです。
途中の景色は素晴らしく、あまりにもスケールが大きすぎて、カメラに収められるものではなかった。
私はシャッターを押すよりも、夢中で景色に見入っていました。
黒部の魅力を伝えきれるものではないですが、わずかな写真の中からピックアップしてみました。

 

周囲の緑と湖面と
赤い橋のコントラストが
素晴らしい。
湖面は深い緑。
まるで、吸い込まれそう。
流れはどこも激しく、
恐怖感を感じるほど。
アーチ型の美しい橋脚。

 

黒薙駅を出て行く列車。
カーブの曲がり具合が
とても美しい。
トンネルの中に設けられた
人道トンネル。
冬はここを歩いて往復。
黒部第2発電所。
四角い造形が美しい。
下部から激しい放水。
鐘釣駅近くの巨大雪渓。
展望台の人間と
比べてみて。

 

終点の欅平に到着する頃には、すっかり黒部の景観に魅了されていました。
今年は雪が深く、欅平周辺の温泉への道は通行止めの状態で、
結局一つも入れなかったのですが、それでも大きな満足感がありました。

 

巨大すぎるほどの黒部の山。怒涛の急流の黒部川。
電力開発のため、これらの大自然に人間が挑み、この黒部軌道が完成されたのは、
なんと!昭和12年のことでした。驚いたことに、戦前なのです。
現在のトンネル工事は、シールドマシンなどでぐんぐんと掘削していきますが、
この時代には、当然ながらそんなものはありません。全て人力と発破でした。
固い岩盤を簡素な機材で掘りぬき、発破をかけて進んでいく。その繰り返しです。
死と常に隣り合わせの坑道、多くの犠牲者を出しながら、この軌道は完成されたのです。

欅平まででもかなりの秘境ですが、実はその先にも上部軌道と呼ばれる軌道が延びています。
このトンネルは吉村昭の「高熱隧道」の舞台となった、高温の岩盤を掘りぬかれたものですが、
165度という熱を持つ岩盤を、恐ろしいことに人力で掘りぬいていったのです。
発破の爆発で飛散する人夫、泡雪崩と呼ばれる台風の数十倍の威力の雪崩で吹き飛ばされる者、
高熱の坑内で体力を奪われて衰弱していく者・・・。
半端ではない数の犠牲を出し、黒部の発電所は完成され、現在に至るのです。

トロッコから眺める自然は本当に美しく、そして強大に私達の目に迫ってきます。
本来だったら目にすることすら出来なかった光景を、今私達は、トロッコから眺めることが出来ます。
黒部の大自然だけでなく、この軌道の完成という偉業をなしとげた先人達の情熱への感動を感じる旅でした。
80分間の短い時間ながら、様々な思いをめぐらすことの出来る、素晴らしい軌道でありました。

 

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