【2006年11月11日(土)】

 

首都圏外郭放水路調圧水槽一般公開

 

東武野田線・南桜井駅。私の行動半径からは外れた場所にあるので、
今回のイベントがなければ、来ることのなかった駅でしょう。
そのイベントとは、「首都圏外郭放水路調圧水槽一般公開」。
埼玉県春日部にある、国土交通省の巨大な治水設備です。
普段は予約をしてから見学なのですが、年に一度だけ予約なしで見学できる、
一般公開が催されており、それに行ってきました。
車は禁止されているので、駅前からシャトルバスに乗り込みます。

 

小雨のそぼ降る中、住宅街の中を抜けて見晴らしのよい道に出ると、
遠くのほうにレンガ色の建物が見えてきました。
これが外郭放水路のコントロールセンターも兼ねている「龍Q館」です。
このすぐ近くでシャトルバスを降りて、後は自由に見学となります。

 

遠くから見るとそれほどでもないように見えますが、結構大きな建物です。
普段は滅多に上がれない屋上に行ってみると、巨大なソーラーパネルが。
しかしそれだけでは電力は賄えず、重油も使っているそうです。
屋上から川方面を見ると、大きな花時計のようなものが見えますが、
あれはトンネルを掘った時のシールドマシンの再利用だそうです。

 

龍Q館の中には、そのシールドマシンの刃や工事のジオラマ、
その他放水路や治水にに関する展示が沢山ありました。
その一角には、調圧水槽からの放水のコントロールセンターもあり、
ダムの中枢部の小型版という感じで、眺めているだけでどきどきしました。

 

さて龍Q館の見学がすんで、いよいよ地下の調圧水槽へ向かいます。
龍Q館の外に出ると順路が示されており、そのとおりに進んでいくと、
言われなければわからないくらいの、質素で小さな入り口。
そこを入ると、延々と下に続く階段。全部で116段だそうです。
見学用の施設ではないので、エレベーターなどはありません。
ひたすら下りて、行き着いた先には・・・

 

このような巨大な空間が!これが「地底神殿」とも呼ばれる、
首都圏外郭放水路の調圧水槽なのです。
この広い空間に貯められる水圧に耐えられるように建てられた柱は、
まさにオリンポスの神殿を思わせます。オリンポス、行ったことないけど。

 

この柱は、上の写真だと円柱に見えますが、実はこのように平たいものです。
周囲の人間と比べると、いかに大きいものなのかが、わかっていただけると思います。
治水設備というとダムが思い浮かびますが、屋外に設置されるダムと違って、
こちらは全てが地下に埋められているもの。
世界最大級の設備だそうですが、日本の土木技術は本当にすごいと改めて感じました。

 

一般見学会に備えて水を多少かきだしたのか、
床には重機のタイヤの跡が見られました。
ここでトラックのS字カーブの練習が出来るなあと思うほど広い。
とにかくそのスケールに圧倒されっぱなしでありました。

 

この巨大施設の全容はこちらのページをご覧頂くとわかります。
主要河川ごとに作られた立坑がトンネルでつながっており、
最後にこの調圧水槽に貯められます。
調圧水槽は第一立坑に隣接していますが、この写真はその第一立坑です。
あまり近寄れはしなかったのですが大きなもので、容積は相当なものでしょう。
奥に見える螺旋階段を見ていただくと、大きさがつかめるのではないでしょうか。

 

地底神殿をしばし歩き回ったあと、出口の階段の上から。
やはりここでもカメラを構えて立ち止まる人たちが大勢いました。
私のカメラの腕では、とてもこの魅力を伝えきれませんが、
興味のある方はオフィシャルサイトのフォトギャラリーをどうぞ。
確か西澤丞さん撮影だったと思いますが、うっとりするほどの美しい写真です。

 

土木方面にはとんと疎いのですが、もともと巨大建造物を見るのが好きで、
コンビナートなども見ているだけで、ドキドキします。
今回は巨大建造物というだけでなく、治水事業という点でも強く惹かれるものがありました。

私は水に囲まれて育ちました。生家の周囲は川だらけで、あちこちに橋がかけられていました。
しかしそれは天然の川ではなく、全て運河だったのです。
高度成長期で水は濁り、得体の知れない泡がたち、時には悪臭を放つこともあった運河。
江戸の頃から、この町の水運を支えてきた運河。
台風になると天井川は溢れ、あたり一面が水浸しになったそうです。
そのため治水には他の地域よりも熱心に取り組み、現在では浸水は全く見られなくなりました。
玄関の前に木の船を立てかけてあった家もあったのに、土木の進歩のおかげでそういう心配もなくなりました。
子供だった私などが知らない間に、しっかりとした治水事業が行われていたのです。

私たちの快適な生活の影には、このような縁の下の力持ちともいうべき存在が、必ずあります。
この外郭放水路は、まさにその存在。
普段大きな主張はしなくても、いざという時に威力を発揮してくれて、それでいてあまり気づかれない存在。
でも町の歴史が水害の歴史でもあった地域の私などには存在感は大きく、
どんな神殿よりもこの地底神殿は、美しく映りました。
最新の土木技術に感謝を捧げながら、帰りのシャトルバスに乗り込みました。
また来年度も行われると思うので、興味のある方は是非ともどうぞ。美しい神殿が、あなたを待っています。

 

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