【2006年10月9日(月)】

銭湯ペンキ絵師・丸山清人氏のペンキ絵制作

東京都杉並区の浴場組合によって開催された、
「杉並浴場組合80周年記念フェスティバル」に行ってきました。
湯でたこは杉並区民ではありません。離れた場所に住んでいます。
でも楽しそうなイベントなので、電車に乗って行ってまいりました。
場所は阿佐ヶ谷の杉並区役所。
群馬県の野菜の即売会もあって、なかなか賑わっています。

 

会場近くには、鳥取県の三朝温泉がローリーで運ばれ、
即席足湯が作られていました。
沢山の人たちが足を浸してニコニコ。
大人も子供も楽しそうです。
それにしても、三朝からお湯持ってきたのか。
すごいなあ。

 


Mサイズらしいが、大きめ

胸にはアヒル隊長が

バックプリントもあり!
足湯の横でくじ引きをやっていたので、早速運試し。
そしたらびっくり、Tシャツが当たりました!
しかも欲しいと思っていた長袖Tシャツ。
こういう記念モノって、嬉しいですねえ。
他にはオリジナル記念桶とか、旅行券なんかが
あったようです。

 

本日のイベントで、一番楽しみにしていたのは、これ。
銭湯のペンキ絵師・丸山清人氏のペンキ絵実演です。
ペンキ絵の実演を見るのは初めてのことなので、
前日から楽しみでワクワクしていました。
今回は時間の関係で、実際の銭湯の壁よりも小さなスペースに、
2時間くらいで描いていくそうです。

 


上方から塗っていくのが基本
ささっとチョークでものすごく大雑把な下書きをしてから始めます。
銭湯での場合は、このように塗りつぶした状態ではなく、
前の絵の上に直接描いていくとのこと。
本日も、ごく簡単なチョークの下書き以外は、
ダイレクトに色をどんどん塗り重ねていっていました。

 

さて富士山にとりかかります。大雑把に色を塗っているように見えます。とても大雑把に見えるんですが・・・

 

あっという間に、こんな見事な富士山が描けていました。
色を何となく重ねているだけのように見えたのに、
15分ほどでこの素晴らしい出来栄え。
ずっと見ていたのですが、何が何やらわからないうちに
描けていたという言い方がぴったり。
こんな大きなカンバスに、こんな短時間で描けるなんて!

 

その後も休みなく、製作は続きます。
写真を見ていただければおわかりでしょうが、
本日は天気がすこぶるよかった。
その為に、ペンキの乾きがとんでもなく速かったようで、
普段よりもかなり描きにくかったようです。

 

ローラーを上手く使って、湖水のグラデーションを整えていきます。
ローラーでこんなことが出来るなんて。見とれてしまいました。
使っているのは普通に塗装に使われるペンキです。
それを色々と混ぜ合わせて、色を作って塗っていくのです。
絵描きと左官屋の両方の技術を駆使して、ペンキ絵は製作されているのですね。
時々ペンキの匂いが会場にも漂ってきました。

 

湖の下方を、少し濃い色で塗っていきます。
このように濃淡をつけることで、遠近感を出すのだそうです。

丸山氏が黙々と描き続ける傍らで、銭湯研究の第一人者である
町田忍氏が銭湯の歴史やペンキ絵の歴史などを、
絵の解説とともに、お話になっていました。
そのお話も興味深く面白く、とても勉強になりました。

 

次は手前に岩を描きます。これもさっさっと色を重ねているうちに、いつの間にか描けています。
右の写真の松の絵は、2〜3分で描いてしまいました。

 

最後に細かい筆を入れていきます。
富士山の峰の濃淡や、山にかかる雲の濃淡など、
立体感を出すために、最終的な仕上げの段階です。
細めの筆に持ち替えても、スピードは変わらず。
すばやく仕上げていきます。

 

明るい緑を入れていって、ますます絵が生き生きしてきました。
とにかく作業工程がすばやい。筆に迷いがない。
それでいて失敗なくこれだけの大きな絵を描けるのですから、
とんでもない技術です。
そして最後に銘を入れて・・・・・

 


完成です!!どうですか、この見事な富士山!!
わずか2時間で描いたとは、とても思えません。
しかも下書きなど殆どなく、ダイレクトに描いたのですよ。
会場は大きな拍手の嵐でした。
本当に素晴らしい作業を見せていただきました。
2時間全く飽きることなく、食い入るように見てしまいました。

 

作業途中で町田氏が「現在東京の銭湯は950軒」とおっしゃっていました。
今年6月の値上げ前には1000軒くらいはあったはずなので、
あっという間に50軒も減ってしまったということです。

現在日本にペンキ絵師は丸山氏含め3人だけ。後継者はいないそうです。
銭湯自体が減少しているのですから、仕方がないことなのかもしれませんが、
日本の大切な文化である銭湯と、それに付随するものは、出来る限り守っていかなければなりません。
その為に自分に出来ることは何かということを、考えていかなければならない、と痛感しました。

 

ペンキ絵実演の次には絵の前に高座を作って、落語でした。
出来上がったばかりのペンキ絵の前での落語。
この噺家さんもこんな経験は初めてのことでしょうね。

 

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